
目次
iFixitが分解で発見した“すごさ”と“無理ゲー”の共存
Metaが発売した新型ARメガネ「Ray-Ban Meta Display」。価格は約800ドルと決して安くありませんが、iFixitの分解レポートによると、その中身は“未来的すぎる構造”でした。
Snapdragon AR1チップに加え、2GBのRAMと32GBのストレージを搭載。右側のテンプル(つる)部分にあるマイクロプロジェクターが、レンズ内部の「ジオメトリック・ウェーブガイド」を通して映像を映し出す仕組みです。
この波導構造は、他のARグラスでよく問題になる「目の輝き(eye glow)」や「虹色の反射(rainbow artifacts)」を防ぐ設計になっているとのこと。ARらしい没入感を損なわず、見た目も自然に見えるよう工夫されています。
美しい構造の裏にある“修理拒否設計”
しかし、その技術的な美しさの代償は「修理のしづらさ」でした。
iFixitによると、フレーム全体が接着剤で密閉されており、ネジひとつ取るにも専門工具と“運”が必要。960mWhのバッテリーが見つかったものの、取り出すには細いリボンケーブルを傷つけないよう慎重に分解する必要がありました。
さらにMetaは現時点で交換用バッテリーを販売しておらず、iFixitも「理論上は交換できるが、現実的ではない」と評価。スピーカーは基板にハンダ付け、レンズは波導構造と一体化、ヒンジ部分ですら分解が困難とのことです。
防滴性能のための“過剰な接着”にも批判
この製品はIPX4等級の防滴性能を備えていますが、iFixitは「軽い雨対応にしては接着剤の量が多すぎる」とコメント。つまり、耐久性を高めるどころか、過剰な密封がメンテナンス性を犠牲にしているという指摘です。
ARグラスというカテゴリ自体がまだ発展途上とはいえ、ユーザーが数年ごとに買い替えを迫られる設計になっている点は気になるところです。
技術の進化と“寿命の短い未来”
今回の分解で明らかになったのは、MetaがAR技術の課題(光学設計や視認性)を確かに克服してきた一方で、「長く使えるプロダクト」という観点が後回しにされていること。
未来を感じさせる仕上がりであるのは間違いありませんが、もしこれが“ウェアラブルの未来”だとしたら、その未来は“修理不可能な消耗品”として訪れるのかもしれません。