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Vision Proの2周年、ようやく広がる「没入型映像」制作の輪
Apple Vision Proが登場してもうすぐ2年。これまで「Apple Immersive Video」という独自の8K没入映像フォーマットは、Apple自身が制作した短編作品のみが公開されていました。
しかし、ようやくこの状況が変わりそうです。Appleがクリエイター向けの制作パイプラインを整備し、第三者も「Apple Immersive Video」を制作できる環境が整ったと報じられています。
Appleが開催した開発者向けイベント「Create Immersive」では、Vision Proの映像技術や音響、そして180度動画への対応といった技術的詳細が解説されました。特に注目されたのは、これまでApple専用だったImmersive Videoの制作・編集・配信が、外部スタジオにも開放されるという点です。

Blackmagicカメラで撮影、DaVinci Resolveも対応へ
これまでAppleは、Blackmagicと共同開発した専用カメラやβ版ソフトを使いながら自社制作を行っていましたが、外部スタジオが同等の環境を再現することは不可能でした。
今回、Blackmagicの対応カメラが一般販売され、スタジオへの出荷が始まったことで、ようやくクリエイターも同じフォーマットで作品を作れるようになります。
もちろんカメラ本体は1台あたり約3万3,000ドル(約500万円)と高価ですが、ソフトウェア面でもDaVinci Resolve StudioやColorfront、SpatialGenなどが編集・再生に対応。VimeoもApple Immersive Videoのアップロードをサポートするなど、配信環境も整備されつつあります。
8K×2で「人間の視界」を再現する仕組み
Apple Immersive Videoは、片目あたり8160×7200ピクセルの映像を4320×4320ピクセルに変換して配信する「Static Foveation」という技術を採用。人間の視界を模倣し、映像の端でも歪みが生じないよう設計されています。
ただし制作は極めて繊細。役者の動きや背景の細部まで意識した演出が求められ、音響設計も没入感維持のために綿密に設計される必要があります。一般ユーザーが手軽に制作できる環境が整うまでには、まだ数年はかかりそうです。
今後はスポーツや映画にも展開、Vision Proの真価が問われる
AppleはすでにNBAロサンゼルス・レイカーズ戦の没入配信を試験的に実施しており、今後はMLBやF1、MLSといったスポーツイベントへの展開も期待されています。
短編作品「Submerged」で示されたように、視聴者の頭の動き=カメラという全く新しい映像文法が生まれつつあります。
現時点でApple Immersive VideoはApple Vision Pro専用ですが、制作環境が開放されたことで今後は独立系スタジオや映像作家による多様な作品が登場する可能性があります。
Appleが作り上げた技術を、どれだけ多くのクリエイターが「体験」として昇華できるか。Vision Proの真価は、これから問われる段階に入りました。
