
AppleのAI評価に関するガイドラインが、米国トランプ政権を意識した内容に改変されたとする報道がありました。これに対しAppleは、「ポリシーの変更は一切ない」と強く否定しています。
目次
報道の概要とAppleの反応
米メディアPoliticoは、AppleがAIモデル「Apple Intelligence」の評価に使うガイドラインを2025年3月に更新したと報じました。同ガイドラインは外部委託先の作業者が利用するもので、スペイン・バルセロナにあるTransperfect社の拠点では約200人が従事しています。
報道では、2024年版と比べて政治的に敏感な要素が追加・削除されており、トランプ大統領への配慮ではないかと指摘されています。しかしAppleは「Responsible AI原則に基づき、定期的にガイドラインを更新しているだけで、方針の変更はない」とコメントしました。
実際に変更された内容
リークされた125ページの文書から判明している主な変更点は以下の通りです。
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「不寛容」や「システム的な人種差別」に関する記述が削除され、「差別は有害」とする表現に置き換え
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Diversity, Equity, and Inclusion(多様性・公平性・包括性、DEI)が「論争的なテーマ」として扱われるように変更
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ワクチンや選挙などが「センシティブな話題」として新たに追加
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政治文脈での「radical」という表現が「差別的」から「扇動的」に分類変更
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ガザに関する話題は特別な取り扱いが必要と明記
このほか、ガイドライン内での「Trump」という語の登場回数が3回から11回に増えたことも報じられています。
Appleの意図と報道の見解
AppleやTransperfectは「ガイドラインは年間で数十回更新されるものであり、今回の改定もその一環」としています。Appleはまた「第三者ベンダーと協力しつつ、幅広いユーザーの質問に責任ある形で対応できるよう、継続的に改良している」と説明しました。
一方で報道は、ガイドラインの変更がトランプ政権の「反 woke」政策に寄せたものと主張。しかしAppleは同時にDEIや環境対策、国際貿易推進など、むしろトランプ政権と対立する方向性の施策を強化しており、方針転換を示す明確な証拠は見つかっていません。
今後の見通し
今回のガイドライン更新は、AIモデルの品質向上と安全性確保を目的とした通常の改定である可能性が高いと考えられます。報道では「チャットボット向けの学習」とも言及されましたが、Appleは独自のチャットボット開発計画を否定しており、次世代のSiriやApple Intelligence関連機能に関連している可能性が指摘されています。
Appleの基本方針は変わらず
AppleのAI評価ガイドライン更新を巡る報道は政治的に注目を集めていますが、現時点で同社の基本方針に変化があった証拠は確認されていません。AppleはあくまでResponsible AIの原則に基づいた継続的な改善を強調しており、今回の動きもその一環とみられます。