
米国による輸出規制を背景に、中国の大手テック企業はAI処理を担う半導体を自前で確保する動きを強めています。
Nvidia製GPUの代替として開発された国産チップは、現時点ではAIモデルの「学習」よりも「推論」に適応する段階にありますが、各社は着実に進展を見せています。
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Alibabaが自社開発チップを投入、互換性を重視
かつてNvidiaの主要顧客であったAlibabaは、自社開発の新プロセッサをテスト中です。
このチップは広範な推論処理を対象とし、中国国内のファウンドリで製造されています。
米国の制裁でTSMCを利用できなくなったことが背景にありますが、Nvidiaのソフトウェアエコシステムとの互換性を確保しており、既存のコードを再利用しやすい設計が特徴です。
MetaXやCambriconなど新興企業も台頭
上海のスタートアップMetaXは、Nvidiaの「H20」よりも大容量メモリを搭載したGPUを発表しました。
電力効率は劣るものの、大規模推論に適した構成となっています。また、古いプロセス技術やマルチダイ方式を組み合わせることで、生産制約を補う計画です。
一方、Cambriconは自社の「Siyuan 590」チップが好調で、四半期売上は約2億4700万ドルに到達しました。
株価は急上昇後に調整しましたが、依然として高い評価を受けています。
国家支援とHuaweiの大規模システム
中国政府は84億ドル規模の基金を立ち上げ、半導体の自給率向上を支援しています。
Huaweiは「Ascend」チップを384基連結したシステムを披露し、一部ベンチマークで米国製を上回る性能を示しました。
ただし、消費電力が大きな課題であり、クラウド事業者は導入に慎重な姿勢を保っています。
現状の課題と展望
国内チップはソフトウェア環境の成熟度が低く、長時間の学習で過熱や故障が発生するとの報告もあります。
最先端の製造装置にアクセスできない中国ファウンドリでは、生産能力の拡大にも限界があります。
そのため現状では、AIモデルの「推論」を円滑に行うことが主目的で、「学習」に関しては依然として遅れが目立ちます。
それでも、Alibabaの互換性重視の設計やDeepSeekのソフトウェア最適化といった取り組みにより、「完全な国産AIスタック」が予想以上に早く普及する可能性も指摘されています。